ホログラフィでは干渉性のよいレーザ光を使う.レーザから出た光をビー ムスプリッタによって2つに分け,図1のように一方の光を顕微鏡の対 物レンズによって広げて物体に当てると,物体の各点から反射光が生じ る.この反射光はあらゆる方向に広がり,物体から適当な距離に置かれ ている記録材料(例えば写真フィルム)にもやってくる.もう一方の光 をミラーによって方向を変え,対物レンズで広げて記録材料に当てる. すなわち,記録材料にこれらの2つの光を重ねて露光する.物体から反 射されて記録材料にやってくる光のことを 物体光,もう一方の光のことを参照 光という.露光した後,現像処理してできたものがホログラムである.
物体を結像するためのレンズは使用しておらず,ホログラムを見ても写 真で言う全くのピンボケ像であり,物体の像らしいものは何も写ってい ない.その代わり1mmに1、000〜7、000本の非常に細かい複 雑な形の縞模様が記録されている.この縞は干渉縞といわれるもので,レーザ光を2つに分けた 後,物体光と参照光として再び重ね合わせた結果,互いに強め合ったり弱め合っ たりする干渉とよばれる現象によっ て生じる.この干渉縞には,物体の明るさに関する情報(これを振幅という)と共にどの方向から光がやっ てきたかという情報(これを位相と いう)も含まれており,これらの情報を干渉縞という形で記録したものが ホログラムである.別の表現をすれ ば,ホログラムは従来の写真のように物体の像そのものをフィルムに記録した ものではなく,参照光を導入することによ り物体から伝搬してくる光そのものを干渉縞の形で凍結して記録したもの といえる.
この凍結した光を解除し再び発生させるためには,図2のように参照光 と同じ光をホログラムに当てればよい.この光を再生照明光という.ホログラムは細かい干渉縞を記 録した一種の回折格子であってこれに光を当てればそのまま直進する光のほか に,別の方向に回折して進む光が生じる.この回折光は再生光とよばれ,記録しておいた物体光と全く同じ 形をしている.物体がそこに見えるということは,物体から反射されて伝搬し てくる光が眼に入るからである.それと全く同じ光がホログラムから生じるた め,その光がやってくる方向を見れば,もはやそこに実際の物体がなくても元 の位置に物体の完全な3次元像が見えるわけである.眼の位置を動かせばその 方向から見た3次元像が見える.
このように,ホログラフィは光の干渉と回 折を利用して物体の全ての情報を記録し再生する技術であり,従来の 写真術とは原理的に全く異なっている.
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