レーザーポインタを利用した安価なホログラム撮影装置

日本大学 吉川 浩

ホログラフィックディスプレイ研究会会報第21巻1号に掲載された記事を再構成しています)

1. はじめに

レーザーポインタが安価に入手できるようになりましたので,少ない部品で安価にホログラムが撮影できるか試してみました.その結果,驚くほど簡単な構成で撮影することができましたのでここに報告します.

2. 撮影装置

写真1が撮影装置の全体です.装置というほどの大げさなものではありません.ケースはクッキーが入っていた缶で,大きさは160ミリ×287ミリ×80ミリですが,もっと小さいものでも十分です.そこにレーザーポインタと電池ボックス,被写体とホログラム乾板およびレーザーポインタを固定する磁石を入れています.すべて手元にあったありあわせのもので済ませましたが,買ったとしても1,000円程度で済むと思います.

写真1 ホログラム撮影装置

使用したレーザーポインタは,秋葉原で300円で売られていたものです.レーザーポインタのレンズは取り外します(写真2).レンズはねじで止めてあるので,ていねいに取り外せば,後で元通りにできます.レーザーから出てくる光は拡がっているので,ホログラムの撮影にレンズは使いません.また,今回の撮影は,被写体の手前にホログラム乾板を置いて撮影するワンステップリップマン(デニシュク型)と呼ばれる方法なので鏡も使用しません.

写真2 レーザーポインタと電池ボックス

レーザーポインタのオンオフに本体のボタンを使うと振動の問題があるので,テープを貼って常に点灯させておき,厚紙で光をさえぎってシャッターにします.また,ボタン電池は高価なので外部に電池ボックスを付けました.レーザーポインタは写真3のように磁石付のクリップで挟み,磁石で缶に固定しました.

写真3 磁石付クリップでレーザーポインタを固定

今回の撮影に使用した被写体を写真4に示します.直径が約25ミリで磁石のついたアクセサリーなので,缶に直接くっつけて固定します.

写真4 被写体

ホログラム乾板の固定は,写真5にあるように複数の磁石で挟むだけです.クリップなどを利用すればもう少し簡単にできると思います.なお,撮影時には乾板の端から不要な光が入らないようにテープで遮光します.また,缶で光が反射するので黒ラシャ紙を貼ってあります.

写真5 乾板の固定

3. 撮影

この装置を使ってホログラムを撮影しました.撮影には暗室を使いましたが,小さい装置なので写真用のチェンジバッグ(黒い布製で両手を入れてフィルムの交換などを行う)などを利用することもできます.ごく普通の机の上に新聞紙を敷いて装置をおきます.それ以上の振動対策は特にしませんでした.

レーザーポインタの出力は約2 mWで,波長は0.643μmです.ホログラム乾板はAGFA社の8E75HDで,露光時間は1秒程度としました.シャッター代わりの厚紙をつまみ上げることで露光させます.現像以降の手順は通常どおりなので省略します. 撮影したホログラムからの再生像を写真6に示します.写真4の被写体と同じ像が写っています.

写真6 再生像

4. むすび

安価で簡単な装置でホログラムの撮影ができました.ただし,装置を簡単にしたために撮影できるホログラムのサイズは小さくなります.レーザーポインタを使って,より大きいサイズのホログラムを撮影するノウハウは以下の本が参考になります.

参考書

F. DeFreitas, A. Rhody nad S. Michael: Shoebox Holography : A Step-By-Step Guide to Making Holograms Using Inexpensive Semiconductor Diode Lasers, Ross Books (CA, USA), 2000


前に戻る